25...一喜一憂【Side:山端逸樹】

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「えっ? ……や、山端さん?」  何でここに?と続けたかったんだろうが、俺の不機嫌な顔を見て直人は言葉を飲み込んだ。  その、戸惑ったような表情が余計に腹立たしさを助長する。  何だってそんなに無防備なんだ、お前は!  思わずそう怒鳴りそうになってから、相原の視線を感じて俺は口を閉ざした。 「……お久しぶりです」  一拍置いて、余裕綽々ににっこり笑う相原の表情を見て、俺はこの年下の優男に負けている気がした。 「……ああ」  不機嫌さを隠さず短くそう返すと、 「ちょ、何でアンタ傘差してねぇんだよ! 濡れてんじゃん!」  直人が、それでなくても狭い傘を俺に差しかけてこようとする。 「帰るぞ」  それを押し留めるように直人の手を引いて歩き出そうとすると、 「先輩は俺の車に乗って帰るから大丈夫です」  傘を差して車からのんびりと降り立ちながら、相原が言った。 「ねっ? 先輩!」 「……え? あ、……うん」  邪気のない――ように見える!――顔でにっこり笑う後輩にそう答えながら、直人が困ったような顔をして俺を見る。 「先にそう約束しちゃったんだ。まさか……山端さんが来てくれるとは思わなかったから……」  だからあっちに乗って帰ってもいいだろ?と問いたげな直人の表情を見て、俺は憮然と言い放つ。 「お前、今日、バイクは?」 「え?」  自分が言ったセリフを完全に無視した俺の発言に、直人が思わずきょとんとした顔をする。それでも俺の機嫌の悪さに気圧されたのか、 「駐輪場に置いてあるけど……」  そう、素直に答えた。 「こいつの車じゃ、それ、乗せて帰れねぇだろ」  別に原付なんてどうでも良かったが、何となく勢いでそう言ってから、直人の腕を握る手に力を込める。
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