26...届く声(完)【Side:三木直人】

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 *  *  * (…ちょっと酷すぎたかな)  せっかくだからお茶でもしませんかと言った相原の誘いには、さすがに乗れなかった。  それにはまた今度なと短く返し、自宅の前で下ろして貰うと、後は課題があるからと言って早々に手を振った。  送ってもらっておきながら、そんな追い返すようなことは正直したくはなかったが、結果論とは言え、俺ではなく原付だけを運ぶ羽目になった山端さんに、せめて出来るだけ早くフォローをしておこうと思ったからだ。 「……ゴメン。これはちょっと、…キツイよな」  玄関に入るなり携帯を取り出し、靴も脱がずに電話をかける。  呼び出し音が鳴り始めても、思いの外すぐには繋がらない。  もしかしたら、怒って無視しているんだろうか。だとしたら、 (…暫く出てくれねーかもしんねーなぁ)  とは思いながらも、しつこく電話を鳴らし続ける。  ――正直言うと、いまだに俺はまだ自分の気持ちにはっきりとした自信があるわけじゃない。  だけど、あれから何度肌を重ねても、やっぱり嫌だとは思えなくて、それは結局、そう言うことなんじゃないかとも思っている。  だって自分で言うのもなんだけど、俺はそう言う部分ではある意味潔癖で、気持ちも無いまま身体だけは、なんて関係絶対許せない性質なんだから。  ただ、やっぱり相手は同性で、踏み出すにはたくさん勇気が必要で、未だに引き返した方がいいのかもしれないと迷うことも多く――、 『直人』  かと言って、それも彼が俺の名を呼べば、一瞬にしてリセットされてしまったりもするんだけど。  いや、リセットされてしまうというよりは、傍にいたいと、いてあげたいと思ってしまう――から、要するにやっぱり俺は彼が好きなんだと思う。  そう時折自覚しては、それなら彼が望むように、せめて名前の呼び方だけでもどうにかしたいと思うんだけど、 (…でも、やっぱ何か照れ臭いんだよな……)  それがまた俺には結構なハードルだったりする。
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