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携帯を耳に当てたまま、どことなく視線を一望させるが、当然ながらそこには誰もいないし、それらしい物は何もない。
それでも、聞こえる音は、気の所為かとも思えないほど徐々に鮮明になってきて、
「…外?!」
やっとそこに思い至った俺は、傾けていた背中を浮かせた。
携帯を落とさないよう注意しながら、急いで扉を開ける。
と、同時。耳元の携帯が、不意に繋がる。
「――原付、届けに来たぜ」
電話口より、耳に流れ込んでくる声。
そして開いた扉の前には、その声の持ち主が立っていた。
「……っ」
「うちに届けさせて、自分はどうやって来るつもりだったんだよ。まさか相原に送らせるつもりは……ねーだろうとは思ってたけど」
顔を上げると、彼は未だ拗ねた風な面持ちを浮かべながらも、俺の顔を真っ直ぐ見詰めてそう言った。
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