01...12月と言えば【Side:三木直人】

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 十二月に入って間も無くのことだった。  そろそろ卒論にも取り掛かろうかと言う時期だ。  ゼミの課題は相変わらず多く、おかげで逸樹さんと一緒に過ごす時間もなかなか取れなくなっていた。  そんな中、久々に学校帰りに車で拾ってもらい、その足で立ち寄ったのは近所のファミレスだ。  その場所を希望したのは俺だった。  実はいくつか話したいことがあったのだ。  だけど、あまり静かな店だとか、雰囲気ある場所だと逆に言えなくなりそうだったから。  だから俺は適度に騒がしくて、気軽に話の出来そうな夕食時のファミレスを選んだ。  依然として学校は忙しい。下手をしたらこれからもっと忙しなくなるかもしれない。加えてバイトもまだ続けている。  それでも今の俺にはとりあえず恋人と言える関係の相手がいて、時節は早くも十二月――となると嫌でも意識せざるを得ない。  実際、この店のメニューも空気も、一応繁華街である周辺も。  もうすっかりクリスマスムード一色になっていた。
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