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03...触れたい温度【Side:三木直人】
(嘘、だろ……)
帰りは学校に迎えに来るって言うから、行きは雪が降りそうに寒い中、歩いて行った。
このまま逸樹さんに先に帰られてしまっては、俺はここからどうやって帰れば――。
なんて、実際に考えるべきことはそこじゃない。
(……つか、何でこうあの人は)
あまりに唐突に席を立った彼の態度に、思わず呆然とその背を見送りかけたが、すぐにはっとしてその背を追った。傍らに投げていたマフラーとダウンジャケットを引っ掴んで。
ガタンと椅子を引く音がしたからか、近くの席のお客さんから向けられた好奇な視線も、レジにいた店員の心配そうな視線もこの際気にしている余裕はない。
見れば出入り口のドア越しにも既に彼の姿は見えなくなっていた。
(マジで冗談はやめろって……)
まさか本気で先に帰るつもりだろうか。
若干背筋を冷やしながら慌てて外に飛び出すと、
(良かった……)
やはりすぐに人影は目に付かないながら、幸いにも駐車場の一角には彼の車がまだあった。
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