1831人が本棚に入れています
本棚に追加
「だから、クリスマス……。時間あるなら、一緒にどっか行かねぇかなって……」
気を取り直し、少しずつ当初の言葉を紡いでいくと、意図せず頬が熱を持ってくる。
それもそのはず、自分はその話を自分から持ち出すのが気恥ずかしくて、ほとんど照れ隠しにあっち――俺の将来について――の話を先に持ち出したのだ。
思い出すと、一層目端に赤みが増して、
「最悪、晩御飯だけでもさ。何か一緒に……ケーキ――がいやなら、酒となんか、軽いものだけでもいいし」
俺は慌てて誤魔化すように視線を逸らした。
彼の重みでろくに動くこともできない中、それでもどうにか身じろいで、できれば助手席に逃げようと算段する。
「ちょっと……とりあえずそこ退けよ。重い。痛い」
自らの表情を悟られたくなくて、努めて声から抑揚をなくす。
言い捨てるように告げて、今度は少し強引に身体を起こそうとした。
が、やはり彼の力は緩まない。俺は再度抗議しようと口を開いた。
「ちょ――…聞いてんの、逸樹さん?」
するとようやく彼は小さく頷き、
「クリスマスか……そうだな」
どういうつもりなのか、俺の気のせいでなければ、稀に見る笑顔をそこに浮かべたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!