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これ以上、上に乗っかった状態のまま話を続けたら、色んな意味で直人の限界が来そうな気がして、俺はとりあえず彼の上から身体を退けた。
そうしてふと窓外に視線を走らせると、先ほど直人を無理矢理車内へ引き込んだときに彼が落としてしまったらしいダウンジャケットとマフラーが目に付いた。
彼を開放する意味も込めて車外に一度出ると、それらを拾い上げて手渡しながら、目線だけで直人を助手席へと促す。
その視線にホッとしたように、そそくさと彼が助手席へ移ったのを確認してから、再び運転席に陣取ると、俺はハンドルにもたれかかるようにして口を開いた。
「クリスマス、か。……俺はイヴから休みを取ろうと思ってるんだが、お前はどうする?」
これは問いかけではあるけれど、当然お前も空けるよな?というニュアンスが込められている。
さっき俺が腹を立てたことで、きっと直人にも負い目があるはずだ。まさか嫌とは言えないだろう。
(正に怪我の功名というヤツだな)
そんなことを思いながら今度は顔に出さず、俺は一人ほくそ笑んだ。
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