07...期待と不安と【Side:三木直人】

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 07...期待と不安と【Side:三木直人】

 はっきり言葉にされないのが余計に性質が悪かった。  俺はその年は普通に平日の二十四日を、死ぬ気で空けた。  学校は冬休みに入っていた。しかし、俺ももう四回生で、時期的にも卒論の準備は始まっている。バイトの方も、回数を減らしはしたが辞めてはいないのだ。  実際バイト先でのクリスマスの休みなんて奪い合いだった。夜なんて特にそう。  スタッフの年齢的なものもあるかもしれないが、実際彼氏や彼女がいる子が多いのもその一因だろう。  そしてそんな中、俺は普通に行けば曜日的に、二十四日の深夜はバイトが入るはずだった。それを何とか昼のバイトに代わって貰い、とにかく夜の時間だけはちゃんと確保していたのだ。  それをまさか「一日空けろ」と言われるなんて――。 (しかも態度で言うから余計怖い……)  それでも最初は、一日は無理だと返そうとした。  だけど、あんな笑顔(かお)を目にしてしまうと……。 (さすがにあれは……断れねぇだろ)  そうして俺は、半ば無理矢理に当日の休みを手に入れた。  代償は今度学食で一番高い定食を奢ること。それを条件に何とか応じてくれたのは、同じ学校、同じ学部の友達だった。  ――なのに。それなのに。
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