1831人が本棚に入れています
本棚に追加
「何で圏外……」
当日の約束の時間――午前十一時になっても彼は一向に現れない。
「その時間までに迎えに行くから、一分たりとも遅れねぇように用意しとけ」
そう何度も釘を刺したのは彼の方だ。
そのくせ、時間を過ぎても一言の連絡もない彼に、俺は「言った自分が遅れてんなよ」とこぼしながら電話をかけた。
しかし、
「……電池切れか?」
再び通話ボタンを押して待ってみても、聞こえてくるのは繰り返し同じアナウンスのみ。
このまま外で待ち続けるのは正直きつい。
俺は携帯で時刻を確認し、一端自室に引き上げることにした。
時刻は既に一時前。時折部屋に戻ってはいたものの、身体は随分冷えていた。
切っていたエアコンのスイッチを入れて、傍らのベッドに腰を下ろす。
ジャケットは着たまま、首にはマフラーを巻いたままで、小さく首を捻った。
手の中の携帯画面をじっと見詰め、暫く様子を窺ってみるが、
「ていうか、何? は? どう言うこと?」
依然としてパネルのライトが点くことはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!