一線の越え方

08...ハプニング【Side:山端逸樹】

　イヴにも休みを取ったけれど、有り難いことに現在日本のカレンダーでは二十三日も天皇誕生日で祝日になっている。
　直人にはその日は二十四日に休みを取った関係で休日出勤になったから……と嘘をついて、俺はここ――直人の実家から車で三十分余りの山の中――へとやって来た。

　会社から借りた軽トラで走る、片道二時間半のドライブはさすがに堪えた。
　ツーリングを楽しむバイカー数名で賑わう道の駅を見つけた俺は、休憩も兼ねてそこへ立ち寄ると、車から降りて大きく伸びをしながら山の空気を吸い込んだ。

（さすがに腰にくるな）

　家を出たのが昼過ぎで、途中どうしても見ておきたかった直人の実家へ寄り道をした――外から眺めただけだが――せいで、時刻は十六時を過ぎていた。

　急がなければ、暗くなってからじゃ作業が面倒になる。それでも今からやることを思えば少しくらいは休息を取ることも重要に思えた俺は、ならばいっそ……と自販機で缶コーヒーを買うと、車に寄りかかるようにしてそれを飲んだ。