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09...過日の記憶【Side:三木直人】
(つか、いま何時……?)
信号に引っかかったのを良いことに、俺はポケットから携帯を取り出した。
(……てか、もう一時かよ)
時刻を確認すると再びそれを仕舞い、青信号になればすぐにスロットルを回す。
約束の時間を一時間ほど過ぎたところで、俺は待ちきれず自宅を後にしていた。
マフラーを口元まで引き上げ、ほとんど毎日乗っている原付を走らせて、向かった先は彼の部屋。
しかし、いくらインターホンを押しても誰かがいるような気配はなく、駐車場を確認してみても、そこに見慣れた車はなかった。
(何なんだよ……ホント勘弁しろっての)
心の中で吐き捨て、盛大な溜息をつく。
かと言って他に探すあてもなく、メールも電話も一切ないとなると、結局俺は家に帰るしかない。自分の部屋で彼を待つ他、術はないのだ。
でも、だけど――。
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