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11...読めない男【Side:三木直人】
示された先にとまっていたのが軽トラだったということにも驚いたが、間も無くその荷台にかかっていたシートがはずされると、
「………は、――…?」
何ていうかもう驚くどころの騒ぎではなかった。
「驚いたか?」
そんな俺を前にして、彼はどこかしたり顔で口元に笑みをひいた。
(……だめだ……。わかるんだけど、この人の欲しい言葉とか、反応とかっ……)
しかしどうにも堪えられない。
俺は眩暈を抑えるように額を押さえながら、溜息をついた。
「たまにすげーバカだなとは思ってたけど……ここまでとは思わなかった」
うっかり目が釘付けになってしまったそれは、保育園をやっている実家でもみたことがないほど、大きくて立派なもみの木だった。傍らにはそれ用の鉢まである。
それで何をするつもりなのかは、もはや聞くまでも無い。
「バカって。お前……いつもそんな風に思ってたのか」
俺の漏らした溜息に若干の不安を覚えたのか、彼の表情が少し曇り、
「ていうかもっと他に言うことはねぇのか、直人」
更には心外とばかりに言い迫られる。
俺は思わず笑ってしまった。
本気で腰抜かして立てなくなったらどうしようかと思った。
「だって普通こんなことしねぇよ。マジで」
言うと、怒ったような焦ったような微妙な眼差しを返される。
それがまた余計に笑いを誘う。
「まぁ、大丈夫。引いてるわけじゃないから」
荷台の傍まで歩いていくと、彼の視線もそれについてくる。
「それは当たり前だ」
「え、そうなの?」
「……『そうなの』?」
「え」
彼の反応はいちいち想定外だった。
「いや、うん。そうだな」
俺は取り繕うように笑って頷いた。
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