11...読めない男【Side:三木直人】

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 荷台に横たわる木の枝に手を伸ばし、その感触を確かめる。「案外触った憶えないな」と物珍しげにこぼすと、やっと彼も少し笑った。やっぱり少し得意げに。 「そうだろう」  ふっと口端を引き上げた彼の顔を見て、どこか子供のようだと思った。  行動も言動もさっぱり読めなくて、なのにその根底にあるものはきっと何より純粋なんだ。それがいまはとても強く感じられる。  本当は、「事故のこと思い出して気が気じゃなかった」と責めるつもりでいたんだ。ともすれば殴りつけてしまいそうな心境だった。  でも、今日は待ちに待ったクリスマスで、彼は彼で今日のことを心底悔いているようだった。それを考えると、俺にはもう言えない。  彼を探して走り回っていた時だって、去年彼がいた現場の前までは行ってみた。  でも、現在の彼の現場はそこではなくて、かと言って俺はその場所を知らなかった。それが悔しくて居た堪れなかったのもあったんだ。  要するに、何も出来ない自分に苛立っていたのもあって――。  俺は気持ちを切り替えるようにささやかな吐息を一つして、改めて柔らかい笑みを向けた。 「なぁ、これ。どこに飾るつもり? 俺の部屋なんか絶対無理だし、逸樹さんの部屋だって、さすがにこれ……エレベーターにのらねぇよな? 外から引き上げるとか、そこまで考えてた?」
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