12...提案【Side:山端逸樹】

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 12...提案【Side:山端逸樹】

 今日、持ち帰ったもみの木は、そんじょそこらのツリーなんて比べ物にならないぐらい立派な木だ。  これを持ち帰るために俺はわざわざ乗り心地の悪い軽トラで遠出をしたのだ。  それを――飾り付ける前段階の状態とはいえ――直人に見せることが出来たことに、図らず笑みが漏れる。  掛けていたシートを取り払ったので直人にも見えているはずだが、荷台の隅にはこの木を立てても引けを取らない大きさの鉢も積んであった。これは昨日山へ赴く前に、道行きのホームセンターで入手したものだ。  家に帰れば装飾用のクリスマスライトやオーナメントもしっかり準備してある。それら全てを首尾よく飾り付けた状態で彼に見せられなかったのは口惜しいが、まぁ、考えようによっては二人で談笑しながら飾り付けるのも悪くないだろう。  もみの木の触り心地を楽しむ直人を見て自信が確信になったとき、不意に直人から指摘された言葉に、俺は湧き上がっていた達成感を打ちのめされた気がして……思わず表情を強張らせた。  どこに飾るか、という質問の答えなら、当然自宅――マンションのリビング――を考えていた。しかし直人の言うように「どうやって家(なか)に入れるか」まで考えが及んでいなかったのだ。  真顔でそう言えば、呆れられるだろうか?  至極当然の問いかけに、咄嗟に返答が出来ず言葉に詰まった俺を見て、直人が呆れたような、そのくせどこか優しさを含ませた笑みを浮かべる。  その表情を見て、俺は半ば偶然あることを思いついた。
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