12...提案【Side:山端逸樹】

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「なぁ、直人。その……怒らないで聞けよ?」  このことは本当は直人には伏せておこうと思っていた。さすがにそんなストーカー紛いのことをしてきたなんて言ったら引かれるだろうと思ったからだ。  しかし、この提案をするにはそこを話さなければどこか唐突過ぎる気がして。 「……実は俺、昨日この木を切るついでにお前の実家を見てきたんだ」  殊更「ついで」の部分を強調して発した言葉は、俺が聞いてもどこか空々しく響いた。それで、少しトーンを落として「色々心配だったし……」と付け加えたら、皮肉にもそっちのほうがしっくりきた。  らしくもなく、前置きをしてから恐る恐る切り出した俺に、存外直人は嫌な顔をしないでいてくれた。  それに少し安堵した俺は、それでも彼の表情に細心の注意を払いながら更に言葉を紡ぐ。 「いや、見てきたっつっても……ちょっと外から覗いただけだから実際はどうかなんて分からねぇんだけど……。もしかしたらあそこ、あんまり大きいツリー、なかったんじゃねぇかと思って……。でな」  そこまで言って、もう一度直人の様子を伺うと、今までとは違って彼の瞳がぱぁっと明るくなるのが分かった。 「びっくりした……心ん中読まれたのかと思った」  どうやら二人して、このツリーを直人の実家に寄贈してはどうか?と考えていたらしい。  直人の嬉しそうな笑顔を見ながら、俺は付け焼刃的発想に救われたのを感じた。  たまには俺らしくない提案をしてみるのもいいかもな。  そんなことを思いながら。
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