14...その夜(おまけ)【Side:三木直人】*

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「あ、逸樹さん……別に車で待っててくれて良かったのに」  一瞬身構えた身体から力が抜ける。  目を向けた先には逸樹さんが立っていて、俺は「そんな待ちきれなかったの?」なんて戯れにこぼしながら再び冷蔵庫に視線を戻す。  そうして再び中のケーキへと手を伸ばした時――、 「直人」  名を呼ばれると同時、突然肩越しに長い腕が延びてきて、 「え? ……え?」  何事かと俺が振り返る前に、パタンと冷蔵庫が閉められてしまった。 「な……、え?」  戸惑いながらも、改めて背後に立つ彼を振り仰ぐ。と、そこに被さる影が一気に色濃くなって、 「! んんっ……!」  次の瞬間、何の前触れもなく俺は口を塞がれていた。 「…ん…ぅ……っ」  塞いだのは彼の唇だった。彼は顎先に指をかけ、俺の意思などお構いなしに口付けの角度を深くしていく。  はっとして身を離そうとしても、不安定な姿勢のせいもあってなかなかうまく行かない。  その間にも、彼の舌は口腔内を這い回り、歯列を辿り、何度も食むように合わせの位置を変えながら、逃げようとする俺の舌を絡めとる。  息継ぎの隙も与えないような執拗な口付けに、押し返そうと触れていた手にも次第に力が入らなくなり、 「ふ…っ……」  俺はいつの間にか縋るように彼の服を掴んでいた。
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