14...その夜(おまけ)【Side:三木直人】*

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 彼はおもむろに身体を起こし、ぞんざいに髪を掻き上げると、無言のまま俺を抱き上げた。 「わっ」  ぐらりと視界が傾いて、突然の浮遊感に思わず声が出る。咄嗟に逸樹さんの首にしがみついたものの、そんな自分の行動に気づいてすぐにその手をぱっと離した。 「お、下ろせよ……っ」  気まずさと気恥ずかしさに顔が熱くなるのを感じ、顔を逸らして悪態をつくが、 「床の上が嫌なんだろ」  そんなことお構いなしに、逸樹さんは奥の洋室に向かい、壁際に置いてあるベッドに俺を下ろした。 「ちょ……逸樹さんっ……」 「確かに床の上は寒いからな」 「そ、それはそうだけど……っ」  間違ってないけど、なんか違う!  身体を起こそうとする俺の肩を、当たり前のように押し返し、 「お前が風邪をひくと俺が退屈する羽目になるし」  さらりとそんなことを言いながら、彼は俺の上にのしかかってくる。
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