14...その夜(おまけ)【Side:三木直人】*

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「な……」  一瞬言葉を失った俺は、それでも何とか抗議しようと口を開くが、 「いいから黙って抱かせろよ」 「…っ……」 「お前だって別に嫌じゃねぇだろ?」  続けざまにそう囁かれ、吐息が掠める距離まで顔を寄せられると、結局なにも言えなくなってしまう。  せめてもの意地で視線を逸らしても、それすら楽しいみたいに視界の端で笑みを浮かべられて、俺はひたすら頬に血が昇るのを意識するしかない。 「………っ」  そこに揶揄うようなキスが降ってくる。一層意識させたいみたいに、それは柄にもなく頬に落ち、目尻に滑り、こめかみを過ぎて、耳元で止まった。  俺はもう縫い止められたかのように動けなくなっていた。  静まり返った室内で、相手に聞こえてしまうのではないかと心配になるくらい、心臓の音がうるさく鳴っていた。
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