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少しでも離れるのが惜しいみたいに、服を床に落とすのも片手間で、唇はほとんど肌の上から離れない。
晒された素肌から改めて寒さを感じたけれど、傍らにあった上掛けを被せられたことでそれはすぐにましになった。
彼の肌が密着すると、共有する体温で更に温かく感じられたし――。ていうか、逸樹さんの方は寒くねーのかな?
そんなことをぼんやり考えていると、
「っ、あっ……!」
耳元から首筋へと位置を変えた唇が、不意に小さな痛みを与えてきた。
「そ、そんなとこ、見えるっ……」
思わず首を反らして、彼の唇の下に手を入れる。今のは絶対痕が付いた。
私服はともかく、バイト先の制服だと誤魔化しがきかないのだ。下にハイネックを着るのは禁止とされているから、どうやったって外から見えてしまう。
それは逸樹さんだって知っているはずなのに、
「別に構わねぇだろ」
困惑する俺に、彼は白々しく笑みをひく。
か、構わねぇわけねぇだろ!
「て言うか、ここは壁が薄そうだな。まぁそれも関係ねぇか」
それも関係なくねぇよ!
言うことなすこと相変わらず自分本位で、呆れる余り俺が言葉に詰まっていると、
「どのみち、今夜は我慢しねぇし」
彼は一層不敵な笑みを浮かべて、まるでとどめを刺すようにそう宣言した。
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