14...その夜(おまけ)【Side:三木直人】*

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 俺は必死に口を引き結び、枕に顔を押し付ける。 「まだそんな余裕あんのかよ」  その姿を見て、逸樹さんは耳に歯を立てた。 「気にすんなって言っても……無理か」  知った風に言われて、腹が立つのに何も言えない。  口を開けばどんな声をあげてしまうかわからないし、寧ろそれが彼の思惑であるようにも感じられて、ますます身動きがとれなくなっていた。  だからと言って開き直ることも俺にはできない。だってここは俺の部屋なのだ。普段から隣の物音がそれなりに聞こえる、格安のワンルームマンション。  逸樹さんの部屋が複数あるようなマンションとは違う。  俺の部屋だって普通に暮らす分には特に不満もないけれど、こんな時ばかりはさすがに思う。  もう少し壁が厚ければって――。
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