14...その夜(おまけ)【Side:三木直人】*

11/18
前へ
/354ページ
次へ
       夢現に、部屋の空調が効いていることに気付く。 「ん……?」  次いで、開けたままだった遮光カーテンを、力任せに閉める音で目を開けた。  重怠い身体をどうにか動かし、そちらを見遣ると、窓際に佇む逸樹さんの姿が目に入った。 「あぁ、起きたのか」 「逸樹さんもう起きてたの……?」 「もうってお前――」  こちらへと戻ってきた逸樹さんは、いつのまにか近くに置いてあったミネラルウォーターのボトルを手に取りながら、 「時間」  それだけ言って、ベッドの宮棚を指差した。 「えっ」  そこには目覚まし時計が置いてあった。俺は促されるままその盤面を見て、 「えっ、えぇっ?! 嘘!」  慌ててそれを手に取ると、 「い、一時?! 昼の?!」  顔がぶつかりそうなほど近くで凝視しながら、喚くような声を上げた。 「お前、そんな声出せんなら、昨日あんな我慢する必要なかったんじゃねぇか」  呆れたようにも、可笑しいようにも見える表情で、逸樹さんは持っていたペットボトルを俺に差し出した。  俺はぽとりと時計を落とし、無言でそれを拾い上げ、棚に戻してから逸樹さんの方を見た。 「そ、それはそれ、これはこれ……。――って言うか、もっと早く起こしてくれて良かったのに」  ペットボトルを受け取ると、誤魔化すようにそれを呷った。 (やばい、ちょっと動揺した)  彼の口にした『昨日』と言う言葉に、目端が勝手に熱を帯びた。続けて昨夜――今朝という方が正しいのか?――の、ことが次々に思い出されそうになり、俺は咄嗟に頭を振った。
/354ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1831人が本棚に入れています
本棚に追加