14...その夜(おまけ)【Side:三木直人】*

12/18
前へ
/354ページ
次へ
「……え、あ、っていうか、どっか買い物行ったの?」  飲んでから言うのも何だが、このペットボトルには見覚えがない。  気を改めて訊ねると、逸樹さんもやはり今頃かと言わんばかりの顔をした。 「お前が用意してたの、酒しかなかったからな。ついでに車も替えてきた」 「あ、そっか、そう言えばお茶切らしてた」 「別に酒飲んで出掛けられなくなりゃなったで、俺は構わねぇんだけどな」  ベッドの上で、上体だけ起こしていた俺の傍に、逸樹さんが手をついた。  俺はぱちりと瞬いた。  不意に、ぎしりとベッドの軋む音がする。  俺ははっとして手の中のペットボトルを逸樹さんに押し付けた。 「あ、あ、いや、せっかくだしどっか行こう、酒は別に夜でもいいし――…、っていうか、ケーキも食わねぇとな?!」  何となくだが彼の意図を察すると、ひやりと背筋が冷たくなった。 (……まさか最初からそのつもりでカーテン閉めた?)  とはこの状況で聞けない。  俺は後退るようにして距離を保ったまま、空笑いを浮かべた。そして彼の横からすり抜けるようにベッドから降りようとして――、 「っ?! うわっ!」  その足元に見事に崩折れた。
/354ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1831人が本棚に入れています
本棚に追加