14...その夜(おまけ)【Side:三木直人】*

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「え、嘘……、た、立て……」  立てない。  想定外の事態に呆然とする。足にも腰にもろくに力が入らず、大袈裟でなく本当に立てなかった。  しかも何も着てねぇし……っ。  ベッドから降り――落ちて、布団がなくなり、そうなってから今更気づいた。  俺は慌てて昨夜脱ぎ落としたままだった服を肩にかけた。下着ははけなかったが、幸い丈には余裕があり、それだけでもないよりはましだった。 「なかなか大変そうだな」  その頭上から、逸樹さんが白々しく声をかけてくる。  誰のせいだよ……! 「これじゃ出掛けらんねぇなぁ」  ぽんぽんと俺の肩を叩き、労るように背中を撫でながら、一方でしゃあしゃあと続ける彼の顔を、睨むようにして見返した。 「ふ、風呂でも入れば平気だよ!」  ちゃんと身体が温まって、そうして少し時間が経てば――。 「それは経験上か?」 「う、うるせぇなっ」  どこか楽しげに言う彼の手を払い除け、俺は手近なものを頼りにどうにか立ち上がる。しかし、一歩、二歩と踏み出したところで、結局ふらふらとその場にへたり込んでしまい、 (くそ…なんなんだよもう、情けねぇなっ……)  そんな自分に思わず唇を噛んだ。
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