14...その夜(おまけ)【Side:三木直人】*

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      「いつまで怒ってんだよ」 「別に怒ってねぇし」  窓外を流れる景色をぼんやりと見つめながら、俺は吐き捨てるように答える。  怒ってないとは言ったけど、複雑な気分であることには変わりない。  俺は車の運転をする彼の横顔を窓越しに意識して、密やかに溜め息をついた。  身体に力は入らなかったけど、彼の勝手な申し出は意地でも断った。  そんなやり取りすら楽しそうな彼に「調子に乗んな」と釘を刺し、何とか自力でシャワーを済ませた俺は、ふらつきながらも出掛ける準備を整えた。  本当はそのままベッドで眠ってしまいたかったけど、支度までに結構時間のかかった俺を、文句も言わずに待っていてくれた逸樹さんを見ていたらそれもできなかった。  なんだかんだ言っても、今日は二人きりで過ごすクリスマスなのだ。それは俺だって忘れていない。  だけど身体はまだまだ重いし、見直した端から裏切られたような気分になったことが思いの外尾を引いていて、 (まぁ、今に始まったことじゃねーけどさ)  そう理解しているはずなのに、なかなか気持ちが切り替えられないでいた。 (つーか、腹減ったな……)  ふと感じた空腹感に、少しだけ気分が浮上する。でもまだそれを口には出せない。  別のことに気が向いたのには少しほっとしたけど、それはそれで何だかばつが悪くて、結局俺は黙り込んだままだった。 「どっか行きてぇとこあるか? 腹減ってんだろ」  そこに逸樹さんが何事もなかったように水を向けてくる。  拍子抜けするほど普通に言われて、俺は思わず逸樹さんの顔を見た。
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