14...その夜(おまけ)【Side:三木直人】*

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 前方を見据えていた逸樹さんの視線が、ちらとこちらに向けられる。  不意討ちのように絡んだ視線に、俺は何故か一瞬背筋を正し、 「じゃあ、アリア……」  そんな自分に戸惑いながらも、ぽつりと答えたのは以前にも一緒に行ったことのある近場のファミレスの名前だった。  それを聞いた逸樹さんは、再び横目に俺を見て、 「了解」  まるで答えが分かっていたみたいに、ふっと笑みを滲ませた。 (何が了解だよ……嬉しそうに)  心の中で悪態をついても、もう悪い気はしていない。寧ろ擽ったいような恥ずかしいような心地で、俺はまた窓越しに逸樹さんの顔を見ていた。  何て言うか……。  俺を素直になれなくするのも彼だけど、素直になるきっかけをくれるのも案外彼だったりするんだよな……。  と、そんなことをぼんやり思いながら――。
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