06...転機【Side:三木直人】

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(眠い……)  結局、帰宅してすぐ眠りに就いたものの、数時間も経たないうちに激しい雷鳴と雨の音に叩き起こされた。  バイト中は立ったまま寝てしまいそうなほど眠たかったはずなのに、二度寝をしようにも熟睡できず、仕方なく俺はベッドを下りた。  ワンルームの部屋の中央に置かれたテーブルには、学校に行く前にでも食べようと思っていた菓子パンが二つと、昨夜店から持って帰ってきた小さめの紙袋が一つ。 (そうだ、これを届けてやらねーと……)  俺は欠伸をしながらそれを目に留め、改めて時計を見た。 「九時すぎか…」  学校までの道のりは、歩いていくと三十分はかかる。  いつもは原付で通学しているからそう遠くは感じないが、本日は生憎の雨模様。しかもどしゃぶり。雷だって、未だ止んでいない。  それ用のレインコートは一応持っているけれど、だからってこんな日に原付に乗るのは、正直あまり好きじゃない。  学校までならバスもあるけど、それはそれでお金が勿体無い。なんたって貧乏学生だ。歩けば歩ける距離だけに、その選択肢は容易には選べない。  それに、例の工事現場はその途中に存在していたりする。 「しゃーねー、歩いてくかぁ」  食べ終えた菓子パンの袋をゴミ袋に突っ込んで、俺は窓の外を眺めながら盛大な溜息を吐いた。
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