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「今の言葉、後悔すんなよ?」
後でやっぱり愛してくださいなんて言ってきたってお断りだからな。
そう付け加えて再度頭を撫でようとしたら、さり気なく交わされた。
「……子供扱いすんな」
ぞくぞくするほど冷めた目をしてそう言い放つ逸樹に、俺は一瞬我を忘れて見入ってしまった。
多分、逸樹は気付いたんだろう。
親からの愛情は得られなくても、ここにいる馬鹿な従兄弟は自分のことを満更嫌っちゃあ居ないということに。
折角買って来たんだからケーキを一緒に食べようぜ、と誘う俺に、「はい」と従順な言葉を発して従う逸樹は、もうここには居なかった。
クリスマス・イヴ。
聖夜と呼ばれる晩、俺は従順な羊の役を演じていた逸樹の殻を一つ崩してやれたような気がした。
早くそうしてやらなかったことを、少し後悔したけれど、済んだことは仕方がない。
これから逸樹の両親が苦労する羽目になるかもしれねぇな。
そんな風に思ってから、何となく楽しくなって口の端を引き上げた。
...end
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