1...思惑【Side:山端逸樹】

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 1...思惑【Side:山端逸樹】

 夏の暑い盛りに目一杯仕事を頑張っただけあって、九月の半ばを過ぎた辺りから抱えている仕事にゆとりが見え始めた。 (この調子でいきゃー)  壁のカレンダーを見詰めながら、思わず頬が緩みそうになる。  十月に入れば、ハッピーマンデーの体育の日目掛けて、土曜日から会社自体が三連休になる並びだ。  その辺りで、夏の間休日返上で頑張った分の代休を取れば、更にまとまった連休に出来る。そうなれば、どこかの日取りで直人とゆっくり旅行、なんてのも夢じゃねぇかも。  最悪旅行は無理でもデートぐらいは可能だろう。  最近卒論の関係で、直人はぴりぴりしていることが多い。  自然、俺への態度も素っ気無い感じが増えていて――。  俺自身忙しい間はそれでも我慢が出来た。  でも自分が暇になれば話は別なわけで。 (そろそろ限界だ……)  身勝手だとは思うけれど、こういう性分なんだから仕方ない。  元々愛情だの言う、目に見えないものに対して不慣れな俺は、余りに放置されていると不安で堪らなくなるのだ。 (ま、多少強引なぐらいが丁度いいだろ)  オクテな直人が相手なんだから、少しぐらい強行手段に及んだほうが釣り合いが取れる。  かなり手前味噌な論法でそう結論付けた俺は、携帯を取り出すと直人へ「来月、旅行にでも行かないか?」とメールを入れた。薄闇に沈む部屋へ帰宅すると同時に、見計らったように固定電話が鳴った。  いつものように真っ先に愛鳥スパロウの様子を見に行こうとしていた俺は、どこか不意打ちを食らった感じで宅電へと足を向け直す。  最近携帯が鳴ることが殆どで、家の電話が鳴る場合といったら身内ぐらいしか考えられなくて――。  そう思い至ると同時に何だか嫌な気分になった。  両親とはもともとそれほど折り合いがいい方ではないからだ。
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