2...タイミング【Side:三木直人】

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 家に着くなり、何に手をつけるでもなくベッドに一直線。結局そのまま深い眠りに落ちた俺は、日中の部屋の暑さにどうにも堪え切れなくなったところで、ようやく重い瞼を上げた。  九月も下旬になったとは言え、まだまだ締め切った部屋の気温は尋常じゃない。それも機能性より家賃重視で選んだワンルームマンションともなればなおさらだ。 「…あっち……」  のろのろと上体を起こし、額に貼り付いていた髪を鬱陶しげに掻き上げる。気がつけば服も帰った時のまま、果ては鞄まで肩から提げたままだった。  俺はテーブルの上のリモコンに手を伸ばし、とにかくエアコンのスイッチを入れた。そして改めて鞄を床に放り、服を脱ぎながら真っ直ぐ浴室に向かった。  シャワーを終えて出てくると、俺は真っ先に冷蔵庫から炭酸飲料のペットボトルを取り出した。 「――アレ、電話鳴ってる?」  スウェットパンツに上は裸と言う格好で、早速それを傾けていると、ふとどこかで携帯が着信を知らせていることに気づく。  脱ぎ捨てていたジーンズのポケットに入れっぱなしだったから、その所為で音が篭っていたらしい。  俺は慌てて口元を拭いながら、なんとかその音が途切れる前に携帯を手に取った。 「…もしもし?」  通話ボタンを押す直前、画面で確認をした番号は、予想外に身内のものだった。  まさか誰かに何かあったとか……? (や、でも先月帰省した時、みんな元気だったし)  一瞬過ぎった嫌な考えを自分で否定して、ともかく返事を待ってみると、 「久しぶりだな。元気にやってるか、直(なお)」  そんな俺の不安を余所に、聞こえてきたのはまるで普段と変わらない兄の声だった。
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