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4...後の祭【Side:三木直人】
元からそう長々メールを打ったり、電話もする方じゃなかったけど、後から冷静になって考えてみると、いくらなんでもあの返信は酷かったかもしれないとちょっとだけ反省もした。
だからと言って、それについて素直に謝ることも個人的には難しく、結果として俺が選んだのはメールの再送。
「今月、最後の週なら土日とも空けられる」
だから何だと言われそうな気もするし、もしかしたら月末の土曜日なんて仕事に決まってるとか言われそうな気もしないけど。
散々言葉選びに頭を悩ませた結果、俺が送ったのはそんなメールだった。
――だけど。
(……なんだよ、無視しなくてもいいじゃねーか…)
あれから何日過ぎても、逸樹さんからの返事は無い。返事が無いどころか、一切何の連絡も入らない。
となると、俺だって意地になってくる。そっちがその気なら、こっちだってもう知るか。
思いながらも、気がつけば鳴らない電話ばかりに意識が行った。
そしてそのまま二週間以上が経過して、件の連休前日の夜。安っぽいインターホンのチャイムが部屋に響き、俺はとにかく意識を切り替えて玄関に向かった。
「悪いな、思ったより道が混んでて遅くなった」
ドアを開けると、そこには予定通りの来訪者――俺の兄貴が立っていた。
ああ、やっぱり嬉しい。…ていうか、もしかしてこう言うのを世間ではブラコンって言うのかな。
一月半ほど前に会ったばかりだと言うのに、気がつけば頬が緩んでいた。
「時間は別に平気だよ、言ってもまだ夕方じゃん。……あ、とりあえず入る?」
「いや、帰って残ってる仕事して、その後京香(きょうか)の実家に行くつもりだから」
「あ、そうなんだ。じゃあ早いとこ帰った方がいいな」
残念だけど。
うっかり喉まで出掛かった言葉を飲み込んで、俺はふと下方に視線を巡らせた。
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