4...後の祭【Side:三木直人】

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 宏哉を中に入れ、部屋の中央にある小さめのこたつテーブルの前に座らせると、俺は前もって用意していたフルーツジュースを、浅めのマグカップに注いだ。  それを彼の目の前に置き、 「これ、好きだったよな」  伺いを立てるように言うと、彼は嬉しそうに笑顔で大きく頷いた。  ――が、それを一口飲んだ宏哉の視線が、不意にカップの中へと落とされる。 「…え、何? いつものと違った?」 「ううん、…でも、いつもはもっと冷たい」 「ええっ、嘘、冷たくない?」  そんなはずは、と思って俺は彼の手からカップを借りる。  グラスを止めてマグカップにしたからか、ちょっと触っただけではすぐに分からなかったが、次いで同じようにひとくち口に含んでみると、確かに思ったほど冷たいとは感じられない。 「ホントだ。微妙にぬるい……。え、でも俺これ買ってきたの昨日だし」  その封を開けたのもたったいまだ。  それに昼過ぎに同じ冷蔵庫から出した炭酸飲料は、普段通りに冷えていた。 (ってことは……?)
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