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冷蔵庫、壊れた?
思い至った答えに、俺は慌てて狭いキッチン端に置かれた冷蔵庫の元へと向かう。
そしてドアを開けてみると、
「うわ、電気ついてねぇ……」
嫌な予感は見事に的中していた。
いや、正確にはそうじゃない。
「直ちゃん、テレビつかない」
そう、だって次にはそんな声が背後から聞こえ――。
(な…、嘘だろ……っ)
一瞬の間の後、弾かれたように振り返ると、宏哉の手には確かにテレビのリモコンが握られていた。ちなみにその使い方は、宏哉もちゃんと知っている。にもかかわらず、テレビは一向につかなかった。
それもそのはず、本体を見遣れば主電源のランプが消えていて、だが俺には一切その覚えが無い。
(いやいや、何コレ……。一体どういうことだよ)
視線は更にエアコンへと向けられ、飛びつくように宏哉の傍に転がっていたリモコンへと手を伸ばす。
日中はまだつけていたクーラーだったが、日が傾くにつれ、冷やし過ぎるのも宏哉の身体に悪そうだと、一旦スイッチを切っていた。
でも、部屋が部屋なだけに、きっと明日の昼にはまた必要になる。
「……は…」
俺は恐る恐るリモコンのスイッチを押した。
が、当然のようにエアコンは何の作動もしない。
ここまできたら、もう殆ど予想通りだったけど、俺は改めて突きつけられたその現実にがっくりと肩を落とした。
「直、ちゃん……?」
その横で、宏哉がきょとんと首を傾げる。俺は深い溜息を一つ落とし、力無く片手を上げた。
空笑い気味の笑みを浮かべ、大丈夫、どうにかする…と力無く添えて。
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