5...似たもの同士【Side:山端逸樹】

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 5...似たもの同士【Side:山端逸樹】

 二週間ぶりに電話口から聞こえてきた直人の声はどこか不安げで、切羽詰った感じがした。  それがやけに引っかかった俺は、怒りも忘れて直人の問いかけに二つ返事でOKを出していた。  しかし――。 「なぁ、美咲、お前、ちょっと留守番しててくれねぇか?」  一縷(いちる)の望みを託して下手に出れば 「え~? やだぁ~! だって逸樹ん家、ゲーム機ないし退屈なんだもぉ~ん!」  こっちを向こうともせず、背中越しに可愛げのない返事が返る。  それで必然的にこちらの声音にも棘が見え隠れするようになる。 「あのなぁ、野暮用でちょっと出かけなきゃなんなくなったんだよ! 一、二時間もすりゃー帰るから寝るなり何なりしてればいいだろ?」  本当は直人の家まで行って帰るのぐらい、三十分もあれば充分だ。でも折角直人と再会するというのに、すぐとんぼ返りする気にはなれなかった。  そんな俺に対し、怯むどころかくるりとこちらへ向き直り、あまつさえ俺をキッと睨みつけながら 「置いて行ったら逸樹に襲われたって近所に駆け込んでやるんだから!」  と、きやがった。しかもこいつならやりかねない、と思える内容で俺を脅迫してくるんだから性質(たち)が悪い。 「あー、もう、分かったよ! じゃあ、サッサと支度しろ。出るぞ!」  そんな美咲と言い合いする間も惜しくなり、俺は無造作に車のキーを手に取ると、そう言って玄関に向かった。 「はぁ~い♪」  こういうときだけお利巧さんになるところが余計に腹立たしかったが、いちいち反応するのも馬鹿らしくて俺は何も言わずにドアを抜けた。
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