5...似たもの同士【Side:山端逸樹】

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 元々ついさっき、俺の家に着いたばかりで荷解きなどをしたわけでもない美咲は身一つで飛び出してくると、さも俺の後ろを歩くのは嫌だと言わんばかりに前方に走り出た。 (駐車場、どこか分かってんのかよ……)  生まれたときから、何故か父親である素直よりも俺によく似ていると言われてきた美咲は、周りから言わせれば性格も俺に似ているらしい。  俺も美咲もそんな風には思わないし、思いたくもないんだが、そんな感じで意見が一致するところ自体似ている証拠だと素直なんかには笑われたりする。 (冗談じゃねぇ)  一人心のうちでそう呟くと、エレベーター前で「降下」ボタンを押して待つ美咲の横へ並んだ。  マンションの地下駐車場に停めてある愛車――黒のハイラックスサーフ――の鍵を開けると、当然の顔をして助手席に乗り込もうとする美咲。それを押し留めて後部座席を指差し、 「お前は後ろ」  そう言うと 「何でよ!」  案の定、そんな声が返る。 「俺の車にゃーチャイルドシートなんて付いてねぇんだよ」  思いっきり不服だろうが、事実は事実だ。目立つ前列になんて乗られて堪るか。 「私、もうチャイルドシートなんて要らないわよ!」  例えそうだとしても、助手席は直人のシートだから諦めろ。  心の中でそう呟きつつ、 「後ろに乗らねーんなら連れて行かねぇぞ」  また、俺に襲われたとか騒ぎ出したら面倒だな、と思いながらそう告げる。  しかし何を思ったのか、美咲は口元に一瞬笑みを浮かべると案外すんなり後部シートに収まってくれた。  ちらっと見えたその表情が気になりはしたが、面倒なので触れないことにした。
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