5...似たもの同士【Side:山端逸樹】

3/6
前へ
/354ページ
次へ
 直人のアパートに着くと、建物を見上げてどこか様子がおかしいことに気付く。 「停電……?」  通りの外灯などには普通に明かりが灯っているところを見ると、どうやら電気が来ていないのは直人の住んでいるアパートだけみたいだ。  とりあえず、と思い路肩に車を寄せた俺はおもむろに携帯の発信ボタンを押す。 『もしもし?』  コール数回で通話口から直人の声が聞こえてきた。 「着いたぞ。今、お前ン家の前だ。なぁ、建物中真っ暗になってるけど……もしかして停電か?」 『うん……』  それで、か。  さっきのどこか切羽詰ったような直人の口調を思い出し、自然口元がほころぶ。どんな理由にせよ、こういうトラブルがあったときに俺のことを思い出してくれたと思えることが嬉しかった。  ふと、幸せ気分の中で後部座席にいる美咲のことが気になったが、珍しく神妙な面持ちでシートに身体を埋めている。 (……?)  その様が何か気になりはしたが、邪魔されないに越したことはない。
/354ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1829人が本棚に入れています
本棚に追加