5...似たもの同士【Side:山端逸樹】

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 静かに潜伏していた甲斐があった!と目を輝かせる美咲に、先ほどの笑みの意味を知る。 (こいつ、俺が会いに行く相手の顔を見定めようと思ってやがったな)  それで、大人しく後部座席に隠れていたんだろう。  突然誰もいないと思っていた後部シートから上がった声に、驚いた様子で目を見開く直人。  その彼の足元に縋るように、今度はハッキリと子供の姿を視認できた。そんな俺の様子に気付いて、直人が気まずそうに言葉をつむぐ。 「甥の宏哉。実は今夜から預ることになってたんだけど……その、ご覧の通り、うち、停電しちゃって……」  小さい子が一緒なのに停電は色々厄介で……だから泊めて欲しいのだ、と言いにくそうに告げる直人に、「だったら何でさっきの電話でそれを言わなかったんだ?」と言おうとして、俺はその言葉を言えなかった。 「い、逸樹さんのほうは……後ろの子、誰? まさか……隠し子……とか?」  直人にそう、聞かれたからだ。
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