5...似たもの同士【Side:山端逸樹】

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 そう。さっきの電話で隠し事をしたのは俺も同罪。直人を責める資格はない。  でも、その誤解はないだろう!と思う。  常日頃から美咲は俺にそっくりだ、と言われていたことを思い出し、自然溜め息が漏れた。 「そう、見えるかよ……」  何となく脱力状態で問いかけると、 「うん。何か面影があるっていうか……」  なんて酷すぎるだろ。  直人の心無い言葉に思わず、 「馬鹿言うな! 俺の小さい頃はどちらかといえばお前の足元の子に似てたんだぞ!」  と言うのと、 「私のパパは逸樹なんかよりお兄さんのほうに似てると思うわ! だってとってもカッコイイもの!」  美咲がそう反論するのとがほぼ同時で――。  その声に、ビクッとして自分の後ろに隠れた子供の頭を気遣うように撫でながら直人が肩を震わせる。  それが笑いを必死に堪えての動きだと知ったときにはもう、怒る気にもなれなくて――。 「逸樹さん、やっぱ、俺、二人は似てると思う……!」  極めつけは目尻に涙を浮かべながら告げられた、直人の笑い混じりの台詞だった。
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