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「直人、ちょっと」
宏哉が美咲ちゃんに慣れるのは、予想よりも随分早かった。
気がつけば美咲ちゃんと共に床に降りてテレビを見ていたし、過剰なくらい何度も俺が傍にいるかどうかを確認する仕草も、もうここ十分ほど一度も見せていなかった。
結果としてソファに座っていたのは俺一人で、そこに背後から不意に声がかかる。
「布団用意するから、手伝ってくれねーか」
「あ、うん」
シャワーを済ませた逸樹さんは、リビングは殆ど素通り状態で、すぐに隣接した寝室へと姿を消した。
その背中を一旦見送ってから、俺はちらりと宏哉たちに視線を戻す。
するとテレビに夢中になっている宏哉の横で、同じように集中しているとばかり思っていた美咲ちゃんと、いきなり目が合ってしまった。
ばち、と思いがけずかち合った視線に俺は一瞬動きを止めたが、それに彼女は「宏哉のことは任せて」とばかりに悪戯っぽく片目を閉じて見せた。
(ホントしっかりしてんな……)
それに素直に甘えた俺は、極力物音を立てないよう席を立ち、やはり足音を立てないよう注意しながら逸樹さんの寝室に向かった。
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