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「くそ……っ!」
トイレにこもり、壁に背を預けて佇むと、さっき直人を腕に抱いたことで生じた、熱を伴う疼きが引くのをじっと待つ。
いっそモヤモヤした気持ちごと吐き出したほうがスッキリ出来るのかもしれないが、それはどこか虚しい気がしてやる気になれなかった。
(俺とガキどもとどっちが大事なんだよ……!)
自分でもどこか子供じみた嫉妬をしていることは分かっている。
けれど、だからと言ってそう思わないようになれるかと言えば話は別なわけで――。
こうなりゃ、寝るときぐらいは絶対直人を俺の傍に置く!
強引にそう結論付けると、なかなか冷めない熱の代わりに大きく息を吐き出した。
俺が便所にこもっている間、美咲が我が物顔で風呂を使ったことは知っていたが、直人は眠ってしまった宏哉を気にしてか、入る気配がしなかった。
俺が見といてやるからそろそろ風呂へ入れ。
そう告げようとリビングに戻った俺を迎えたのは、二組の布団でくっ付き合うように川の字に並んだ三人の姿で。
「な、直……?」
その光景に、どこか疎外感を覚えて思わず呼びかけた俺に、寝転んで少年の寝顔を見詰めていた直人がゆっくりと視線を投げかけてくる。
少年を挟んでこちら側――俺の足元――にはパジャマに着替えた美咲がちゃっかり陣取っていた。
起きていれば可愛げのない少女だが、こうして眠っている姿はどこか無防備であどけない。
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