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(――うわ、何か置いてある)
が、間もなく目に入ったその光景は、あっさり俺の期待を裏切るようなもので。
一応出入りできる大きさの窓は付いていたものの、普段は全く開け閉めしていないのか、その正面には一つの大きな箱が置いてあった。しかも、いつから触っていないのか、その表面には砂埃が積もっている。
(……てか、何これ。何が入ってんだろ)
当初の目的を忘れたわけではなかったが、気になりだすと止まらない。
俺は目先の好奇心に負けて、不躾にもじろじろとその箱を見回した。
箱はよくあるダンボール。だが大人がひとり入れるかと言うくらいの大きさだ。
暗がりだからか、元からなのか、外装にそれらしい文字も見当たらなくて、俺はこんなのは駄目だと思いながらも、とうとう我慢しきれず箱の蓋に手をかけた。
「何をやってる」
「!」
刹那。俺は思いきり悲鳴を上げそうになった。
そうしなくて済んだのは、彼が俺の口を塞いだから。
「……窓、開いてたんだ」
本当に、口から心臓が飛び出そうだった。
俺は当然のように未だ早鐘を打ち続ける鼓動を抑え、小さく返した。
どうやら反対側の窓は最初から開いていたらしい。
そのくせカーテンが揺れなかったのは、単にそれだけの風が無かったから。
「……て、言うか。まだ起きてたんだな、逸樹さん……」
ああ、何かいろんな意味で居た堪れない。
そうひしひしと感じた俺は、とにかく場を濁そうと努めて笑って見せた。
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