9...崖っぷち【Side:山端逸樹】

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 何だか幼い頃同様、素直にいいように踊らされている気がして、はからずも口の端に自嘲めいた笑みが浮かぶ。  そんな俺の目に飛び込んできたのは、くだんの段ボールに興味津々な様子の直人の姿で。  今にも箱に手を掛けそうな直人を見て、俺は正直過去を暴かれるような気がしてしまい――。 「何をやってる」  それで、何の前触れもなくそう問いかけてしまったのだ。  その声にびくっと肩を震わせて焦る直人が愛しくて。  外ということも忘れて、俺は無我夢中で直人を求めてしまった。  そういうところが、いつも直人を困らせるということは分かっているんだが、自分でも抑えきれない衝動なんだから仕方がない。  とりあえず一度達(い)かないことにはどうしようもないぐらいに切羽詰まっていたのだ。
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