10...求めるのは【Side:三木直人】*

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 10...求めるのは【Side:三木直人】*

 思いがけず声をかけられ、びくりと大きく肩が揺れた。 「え……あ、えっ?」  声がした方へと俺が目を向けるより先に、バルコニーへと踏み出してきた逸樹さんに気圧されて、不本意にも声が上擦った。 「ちょ――…っ、ちょ…待…っ……」  あっという間に距離を詰められ、遅れて視線が絡むと、逸樹さんは胡乱げに目を細めながら、いきなり俺の胸倉を強く掴んだ。 「ゴメン、悪かったって…! 俺も自分でちょっと言い過ぎたと思って――」  思ったから、様子を窺おうとしたんだよ!  そう続ける予定だった言葉は、口を塞がれたことで阻まれる。  もしかしたら殴られるのかもしれないと思った俺は、不意に落ちてきた影に咄嗟目を瞑り、 「…ぅ、んん――…!」  だが彼が仕掛けてきたのは、もう逃がさないとばかりの強引な口付けだった。
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