10...求めるのは【Side:三木直人】*

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 逸樹さんの舌が外気に冷えた肌の上を辿り、時折吸い付いては淡い所有印を残す。  普段なら首筋は駄目だと怒鳴るなり暴れるなりして諌めることも多かったが、この状況ではそれもできない。下手に行動を起こすと、自分から下に真っ逆さま――なんて嫌な想像もしてしまうから尚更だ。  いつの間にかパーカーの前は開けられていて、かと思うと、シャツの裾から片手が滑り込んでくる。それでもどうにか頭を起こし、俺は彼の肩を掴む手に力を込めた。 「…逸、樹さ……、せめて、部屋…っ、あ……!」  が、そうして言葉を紡ごうとすると、やはりそれも許さないとばかりに不意打ちで胸の突起を爪弾かれる。堪え切れず漏らしてしまった自分の声に、俺は一気に目端が熱くなるのを感じた。  部屋の中に聞こえたら――なんて、そればかりを気にしていたけれど、よく考えればここはマンションで、しかも外なのだ。隣人や、最悪近くを通りかかっただけの人間に気づかれる可能性だってある。  俺は慌てて唇を噛み締めた。 「んん……っ、う…、…っ……!」  それでも、鼻から抜ける吐息は音になり、気を抜くと唇の隙間から微かな声が漏れる。彼は片手で俺の胸倉を抑えたまま、他方の手で触れた突起を摘み上げた。  ビリ、と痺れるような甘い疼きが背筋を走り、知らず内腿が焦れたように戦慄く。外気の冷たさの所為もあり、突起は押しつぶされても即座に形を取り戻す。軽く引っ張るようにされながら、先端をシャツの布に擦り付けられると、その気もないのに腰まで勝手に揺らめいた。
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