10...求めるのは【Side:三木直人】*

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 俺が滴らせた先走りと、同じく逸樹さんが浮かせたそれと。後は申し訳程度に唾液を纏わせた指先がなぞった準備だけで、狭い入口が一気に押し広げられる。 「…、い…っ――!」  堪え切れず上げかけた声は、彼が口付けたことでどうにか抑えられた。  キスで口を塞がれながら、強引に最奥まで穿たれる。  もう実際何度も受け入れているとは言え、準備不足が否めない入口の皮膚は、引き攣れてぴりぴりとした痛みを訴えた。  全てを収め切った彼は、さすがにすぐに動くまでの暴挙には出ずに、ややしてそっと唇を離した。  圧迫感も違和感も、挙句痛みも未だに続いていたが、それももう悲鳴をあげるほどじゃない。 「……だから、無茶、すんな…よ……、…そんなしなくても、俺は逃げないって……言っただろ」  俺は時間をかけて息を吐き、強く閉じていた双眸を開けて、彼の顔を静かに見上げた。  笑う余裕は無かったけど、別に怒るような心境でもなかった。  彼はいつだって我儘で強引で、一旦こうだと決めたら躊躇が無い。  よく言えば自分に素直と言ったところだけど、悪く言えば周りが見えない――て言うより、見ようとしない、最悪見る必要が無いとか思ってそうな――人だと思う。  でも俺はそんな逸樹さんが嫌いじゃない。手に余ると思うこともそれなりにあったりもするけれど、それも許せない範囲じゃない。  そもそも、こんな――今みたいな――ことを許せてしまうんだから、そこにどれだけの気持ちがあるんだか、正直自分でも計り知れない。
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