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直人の中に何度吐き出したか分からない欲望の残滓は、直人自身のものと相まって彼の身体のあちこちを汚していた。
彼を起こさないよう、脱衣所でタオルを濡らしてくると、そんな直人の身体をぬぐってやる。
そうしながら、そこここに付いた鬱血の痕を見て、思わず溜め息が漏れる。
(こんなに酷くするつもりはなかった――)
俺が身体のあちこちを拭っても起きる気配を見せない、ぐったりとした直人の寝顔を見つめながら、申し訳ないような気持ちが込み上げてくる。
でも。
(お前が悪いんだぞ)
ずっと俺を放置しておいたから――。
「お前、俺とガキどもとどっちが大事なんだよ……?」
直人が眠っているのを良いことに、そんな女々しい愚痴を口の端に乗せてみる。
直人をこの腕に抱きながら、俺のことしか考えられないようにしてやろう、と何度も思った。そして、そうなるように努力したことが、彼を執拗なまでに責める結果になってしまったのだ。
けれど、実際直人には最後の最後まで声を漏らさないようにしなければ、という羞恥心は残っていたから。
ある意味、俺の願いは叶わなかった、と言える――。
それ以上彼を見詰めていたら、「宏哉たちに決まってんだろ」という声が聞こえてきそうで……俺は慌てて直人に背を向けて寝そべった。
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