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12...晴れた空【Side:三木直人】
明け方――とは言え、まだ外は薄暗い。
昨夜のことを思えば、そんな時分に目が覚めたのは本当に奇跡だと思う。
(……シャワー浴びたい)
俺はそのまま寝ていたい気持ちを抑えこみ、気だるい身体に鞭打って、どうにかベッドを後にする。
宏哉たちが起きる前にと思えばこそ、急く気持ちが真っ直ぐリビングへと続くドアに向かわせて。
けれどドアを開ける直前、俺は忘れ物を思い出したかのように振り返った。
ベッドの上には、どこか拗ねた風に背を向けて眠る逸樹さんの姿がある。
あれだけ好き勝手やっておいて、なんでその態度なんだよ。
と、思わず突っ込みたくもなったけれど。
「…ホント、ばかだな」
俺はそれだけ呟くと、反してそう悪くない気分で寝室を出て行った。
極力音を立てないように。宏哉たちだけでなく、日頃仕事に追われて忙しくしている逸樹さんを、出来るだけゆっくり寝かせてあげたくて。
一応願いは通じたようで、俺がシャワーを浴びて戻っても、部屋は相変わらず遮光カーテンに遮られ、宏哉も美咲ちゃんもぐっすり眠ったままだった。
寝室に続くドアに視線を移しても、それが開かれたような気配も無い。
正直、予定以上に浴室に篭る羽目になった俺は、出てきた時に誰か起きていたらと思うと、どう言い訳をしようか考えるのに必死だった。
だからこそ、安堵の息が漏れるのを止められない。
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