14...優先順位【Side:三木直人】

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 14...優先順位【Side:三木直人】

「…ったく、もう離せ、痛い!」  つい数時間前に後にしたばかりの寝室に、どういうわけかまた引っ張り込まれ、挙句鍵まで掛けられて、俺は思わずその手を払った。 「いい加減にしろよ。一体何がそんなに気に入らねぇの?」  吐き捨てるように溜息を吐き、俺はちらと閉ざされたドアを見る。  今の騒ぎで、もしかしたら宏哉が起きてしまったかもしれない。そうじゃなくても、美咲ちゃんの目の前での出来事だ。彼女がどう思ったか、想像するだけでも頭が痛くなる。 「二人きりの時ならまだしも――」 「その二人きりになれねーからだろうが」 「だからって、何も美咲ちゃんの前であんな……って言うか! 昨日の夜から朝までちゃんと一緒にいただろっ」  一応扉の外で、彼女が耳をそばだてている可能性を考え、俺は潜めた声で言い返す。  が、逸樹さんはと言うと、そんなことは関係ないとばかりに声を荒げた。 「そんなんじゃ全然足りねぇんだよ!」  しかも、そう言うが早いか、思い切り間近の壁を手のひらで叩く。  バン! と空気がビリビリと振動するかのような音が響き、俺は咄嗟に肩を竦めた。
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