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「お前、俺とガキどもとどっちが大事なんだよ……?」
昨夜眠りに落ちる前。夢現の意識の中で、彼が子供みたいに零した科白。
「でも、そうだな。アンタがもし、宏哉と同じように泣いてたら……ちょっとくらい優先して抱き締めてやってもいいかな」
(約束は出来ないけど)
付言は心の中だけで。
俺は小さく笑みを浮かべた。
「だからもうちょっと……」
独り言のように続けながら、彼の頬に宥めるみたいなキスを残し、
「大人になって下さい」
その耳元に小さく耳打ちをする。
半ば揶揄うみたいなそれに、逸樹さんは即行反論したい風だったが、更に言葉を継ぐことでその隙を与えない。
「後は自信。一応もうちょっと……自信持ってもいいと思うぜ」
(自分がどれだけ俺に想われてるか)
続きを声に出さなかったのは、ある意味制裁。
まぁ、それでもいつかは、ちゃんと言ってやろうとは思う。
例えばこの後、彼が本当に良い子にしていたら。
子供たちの隙を見て囁いてもいい。
俺はアンタが想うより、きっとずっと、アンタを好きなんだよ。って。
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