15...最良の選択【Side:山端逸樹】(完)

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 今まで自信家だのなんだなの言われることはあっても、逆の言葉を言われたことはなかったので、その台詞に驚いて、一瞬瞳を見開いた。  俺が自信を持てずにいることがあるとすれば――それは直人の、俺へ対する気持ち以外には考えられない。 (自信……持ってもいい……のか?)  ふとそう考えて、今の言葉の裏に隠された真意を垣間見たような気がして、俺は思わず赤面する。  そんな俺を置いて、直人が部屋から出て行った。  程なくして隣室から子供の泣き声が聞こえてきて――。次いでそれを宥める直人と美咲の声が途切れ途切れに聞こえてきた。 (宏哉……か?)  恐らく泣いているのは彼だろう。  目覚めたとき、直人が傍に居なかったのが原因だろうか?  だとすれば彼が泣いている原因の一端は俺にもあるということで――。  頭を軽く振ると、俺は一度深呼吸をして部屋の扉を開けた。  途端、美咲が射るような視線で俺を見たけれど、あえて気付かない振りをする。  泣いている宏哉を囲んで座る美咲と直人の傍らに立ち、 「どうした? 何を泣いてる?」  見下ろすようにして宏哉にそう問いかければ、彼は一層激しく泣きじゃくってしまい……。 (え……? ちょい、待て、嘘だろっ?)  本当は気遣うつもりで掛けた言葉だったのに、美咲と直人に二人して「逸樹は愛想がないから怖いのよ」だの、「逸樹さんはちょっと黙ってて」だの言われてしまった。
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