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「……直ちゃん?」
自分の服を引っ張るようにして小声で呼びかけ顔を見詰めてくる宏哉に、直人もさすがに根負けしたらしい。
「……分かった。じゃあ、しばらくの間、ここに置いてもらおうな?」
そう言って宏哉の頭を撫でる。
俺がごねたんじゃ、絶対に帰ると言って譲らないだろうに、子供が相手だと何と篭絡(ろうらく)しやすいことか。
ふとそこまで考えてから、俺は直人と、宏哉を交互に見遣った。
大人になれと言ったり、宏哉と同じように泣けば優先してやると言ったり……直人は一体どちらの俺を望んでいるんだろう?
そんなことを考えてしばし逡巡した結果俺が選んだのは、その時の自分にとって最良だと思える選択肢。まぁ、それが本当に最良かどうかは、結果が出てみないと解らないところではあるけれど――。
END
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